2006年4月27日
ソニーから録音再生型Hi-MDウォークマンの新製品「MZ-RH1」が発売された。これまでのMDは、同じようにデジタル化されているのに、パソコンのライブラリーとは別々に管理しなければならかった。しかし、MZ-RH1ではMDに録音した音楽を、劣化なしにパソコンのHDDにコピーして再生もできる。「MDの資産をパソコンで聴いたり、ウォークマンAなどとも共有したい」。そんな要望に応えてくれるのが本機である。
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1GBのHi-MDディスク |
MDの資産を“継承”し、“発展”させられる
Hi-MD規格は、MDの上位規格として、2004年に登場した。従来のMDメディアを再生できるのはもちろんのこと、現行の“録音用MD”(60〜80分)や“1GBの専用メディア”をHi-MDフォーマットすることで、最大45時間(※1)の長時間録音を行なったり、パソコンのリムーバブルストレージとして活用できるのがウリである。
録音形式には不可逆圧縮のATRAC3/ATRAC3plusに加えて、非圧縮のリニアPCM(44.1kHz/16bit、1.4Mbps)も選択できる。CDと同等のクオリティーで、約1時間半の録音が可能だ。楽器演奏などをマイクで録音する“生録派”にとっては、これまでDATウォークマンという有力な選択肢があったのだが、昨年出荷が完了した。ローランドの「R-09」やM-Audioの「MicroTrack 24/96」など、本機と同価格帯で、メモリーカードに非圧縮で96kHz/24bitの記録が録音ができる機種も存在するが、Hi-MDのメディアは1GBでも700円程度と単価が安い。バッテリーも、PCM録音時で最大6時間持ち、競合製品より若干長くなっている(R-09が4時間、MicroTrack24/96が5時間)。
※1 ATRAC3plus形式の48kbpsで記録した場合
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別売のコンデンサーマイク(ECM-MS907)で、野鳥の声などを録音してみたが、周囲の雰囲気をかなりリアルに記録することができた。マイクはプラグインパワーで動作する。 |
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操作部分は一方の側面にまとめられている。右側に録音や選曲用のスイッチ、左側にボリュームスイッチが見える。黒いアクリルパネルは有機ELディスプレーとなっている。 |
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規格の独自性が高く、著作権保護も厳密なため、“閉じたフォーマット”という印象の強いMDだが、Hi-MDウォークマンは2005年の機種で、汎用性の高いMP3のファイルをパソコンから転送できるようになっている。また、Hi-MDで生録したデータをWAVE形式で変換して、パソコン上で編集したり、ほかの再生ソフトで開くこともできる。
唯一できなかったのは、「プレーヤー側でMDにデジタル録音したデータを、パソコンに移すこと」だった。MDには“SCMS”(Serial Copy Management System)という著作権保護機能があり、光入力で取り込んだデジタル信号をエンコードした際、そのデータをデジタルのまま出力できないためだ。しかし、これもMZ-RH1で可能になる。「もはやMDは閉じたメディアではない」と言うのが筆者の感想だ。
MDからの転送は非常にシンプル
MZ-RH1には、Windows XPに対応したライブラリーソフトの「SonicStage 3.4」が付属する。SonicStage 3.4はソニーのサイトからフリー版が入手できるが、フリー版ではMDのデータをパソコンにコピーできない。
MDの音楽データをパソコンにコピーする手順は非常に簡単だ。MZ-RH1をパソコンに接続して、SonicStageを起動。「音楽を転送する」のタブを選択する。右側のペインにMDの内容が表示されるので、パソコンにコピーしたい曲を選び、左向きの矢印(←)を押す。これで終了だ。試しに、アルバム1枚ぶんの曲データ(19曲、約66分)を転送したところ、約11分でコピーが完了した。ちなみに、同じファイルをMDに書き戻した際の時間は約2分15秒だった(もちろん曲名情報入りのMDになる)。
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右側のリストがMDの内容、左側がパソコン内のライブラリー。転送したい曲を選択し、移したい方向の矢印を押せばいい。 |
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MDから取り込んだ音声をWAVE形式に変換することで、別のソフトで編集したり、他のソフトで開くことも可能になる。 |
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MDのSPモードはATRACの292kbpsで記録されている。LP2モードはATRAC3の132kbps、LP4モードはATRAC3の66kbpsである。SonicStageは、ATRACの再生に対応していないため、SPのデータを取り込む際には、256kbpsのATRAC3plus形式か、WAVE形式を選択する必要がある。LP2とLP4の場合は、そのままの形式でコピーできるようだ。パソコンにコピーしたデータは、パソコンで再生するのはもちろん、CD-Rに音楽CDとして焼いたり、“ウォークマンA”シリーズなどのDAP(Digital Audio Player)に転送することもできる。
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テープからアナログで音楽を取り込んでいるところ。波形データを見るため、アナログソースにタグ情報をつけられる。 |
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“該当する楽曲”が複数ある場合には、画像のように、ユーザーが正しい候補を選択できる。 |
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上述のように1枚のディスクの転送には10分程度かかるので、MDの枚数が多い場合にはそれなりに時間がかかるが、コピー中に同じパソコンで別の作業が行なえる。インターネットを見たりしながら、気長にライブラリーを充実させていけばいいだろう。SonicStageで音楽を再生することも可能だが、転送中には別のタブ(音楽を取り込む、マイライブラリ)に飛ぶことができなくなる。左側にライブラリーのリストが表示されているので、選曲は行なえるが、表示されているタイトルと再生される曲が対応しない場合があった。どうやら、転送が完全に終了し、マイライブラリに切り替えるまで、リストの表示が更新されないのが原因のようだ。このとき裏では、MDから転送された楽曲がライブラリーにどんどん追加されているため、リストの曲名と実際に再生される曲が食い違ってしまう。この点は注意して使用したい。
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カット編集を行なう際には、編集から分割(ディバイド)を選択。 |
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上のバーで分割したい大まかな場所を指定したあと、下のバーでさらに細かく調整する。 |
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MDからコピーしたデータには、楽曲情報が自動的に追加される。MDの中には過去に自分で編集したコンピレーション(ベスト盤)や、レコードやテープからアナログで取り込んだものも含まれているかもしれない。楽曲の判定はデータの波形も参考にしているので、こういったソースでも曲情報を取得できる。楽曲情報のデータベースはGracenoteのサービスを参照しているようだが、曲情報が完全に読み込み終わるまで20〜30秒の時間がかかる。
過去にレコードやテープからアナログで取り込んだ音楽データをいくつか試してみたが、かなり高い確率で楽曲情報を取得できて、なかなか便利である。ただし、アナログ録音した際にテープのヒスノイズが大きめに入ってしまったり、曲の頭に余分な音や空白が入ってしまうと、うまく波形が一致せず、正確な結果が得られなくなるようだ。その場合はデータの編集が必要だ。不要な部分をカットするだけなら、SonicStageの“編集”メニューにある“分割(ディバイド)”である程度対応できる。それより複雑な処理を行ないたい場合は、WAVE編集ソフトやマスタリングソフトが必要になるが、VAIOのユーザーならプリインストールされているマスタリングソフト「SonicStage Mastering Studio」が手軽で高機能だ。
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MD SIMPLE BURNER。CDからのリッピングとHi-MDやMDディスクへの転送をワンタッチで行なえるソフト |
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Hi-MDディスクであれば、プレーヤーに入れ、USBケーブルにつなぐだけで、外部ストレージとして認識される |
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なお、MZ-RH1にはSonicStageのほかに、CDのリッピングからHi-MD/MDへの転送をワンタッチで行なえる「MD SIMPLE BURNER」と、MZ-RH1で録音した音楽をMacintoshに転送できる「Hi-MD Music Transfer for Mac ver.1.0」というソフトも付属する(※2)。
※2 Hi-MDモードで録音したコンテンツのみ転送が可能
Hi-MDでいい音を心配なく残そう
フラッシュメモリーやHDDを搭載したプレーヤーを何台か所有している筆者だが、ここ数年MDはあまり積極的に使ってこなかった。購入した最初で最後の機種は「MZ-R55」という録音再生機で、8年ほど前の話になる。レンタルCDの録音なども50〜60枚行なったが、主に取材の録音用に使用してきた。理由としては、音質ではCD、管理の容易さではMP3のほうが優れていると感じていたからだ。率直に言って、MDという独自規格のライブラリーをこれから先も残せるかどうかに不安があった。しかし、MZ-RH1の登場でその不安はなくなった形になる。
過去のライブラリーを現在に生かせるというのがMZ-RH1の魅力だが、実際に音を聞いてみるとなかなかの高音質で、これから録音する音楽も積極的にこれに入れて聴きたいと考えるようになった。DAPの世界でも、音質にこだわった機種がいくつか登場してきているとはいえ、大半の機種は、本機の水準に到達できていないだろう。
MZ-RH1は中高域の透明度の高さと、引き締まって重量感のある低音が魅力だ。若干硬質だが、解像感が高く、非常にしっかりとした印象で、ソース本来の音を忠実に聞きたいという人にお勧めできる。HDデジタルアンプの搭載が音質に一役買っているようだ。また、パソコンで聞く際に再生ソフトが重要であることも改めて実感した。ソフトごとに音色や音質に特徴があり、同じソースを再生してもかなり異なる印象を持つ。iTunesやWindows Media Player、WinAmpなど、いくつかのソフトと聞き比べてみたが、カッチリとして硬質なSonicStageの音は「過去にMDで録音した音が、こんなに良かったとは!」と再認識させるものだった。
MDには13年超の歴史があり、過去に録音したMDのライブラリーが相当数あるという人も多いだろう。ポータブル再生環境としてはDAPが主流になりつつあるとはいえ、稼動数ではまだまだMDのほうが多いだろう。自分で編集したベスト盤を友達と交換したり、ドライブの際に車中で聞きたいといったニーズで活躍する場面も多い。DAPの世界では、プレイリストの公開などネットを使った新しい方法も登場しつつあるが、ファイル形式や著作権保護の関係で、他人とデータの受け渡しをするのは意外に面倒だ。
また、ラジオのエアチェックなどもパソコンよりも、ミニコンポなどのほうが得意な分野だ。パソコンにデータを取り込むことで放送の一部分だけを残すこともかんたんにできる。こういったMDの資産をパソコンやほかのポータブルプレーヤーで生かせる意義は大きいと思う。
そういう意味でMZ-RH1は、手軽に高音質なライブ録音がしたい“生録派”、MDをパソコンライブラリーに統合したい“資産継承派”、DAPの音質にはまだまだ不満がある“こだわり派”、ラジオ番組をMDコンポでタイマー録音して聞く“エアチェック派”(パソコンでラジオを録音するのは意外に難しい)などにとって魅力的な選択肢になると思われる。
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ディスプレー部分。写真のメニューのほか、左右チャンネルの録音レベルを表示することもできる |
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ブラックモデルは、側面のアクリルパネルとシームレス感が魅力的 |
なお、MZ-RH1の店頭モデルはシルバー1色だが、ソニーの直販サイト“SonyStyle”では、限定色のブラックも販売されている。ブラックボディーは、サイドのアクリルパネルとの一体感も高く、スタイリッシュだ。実際かなり好評なようで、SonyStyleでは、現在品切れ状態。6月以降の予約を受け付けている状態になっている(4月20日現在)。
| MZ-RH1の主なスペック |
| 製品名 |
MZ-RH1 |
| 対応メディア |
MDディスク(60/74/80分)、Hi-MD規格専用1GBディスク |
録音時間 (Hi-MD規格専用1GBディスク使用時) |
PCMモード(リニアPCM/1.4Mbps):約1時間34分、Hi-SPモード(ATRAC3plus/256kbps):約7時間55分、Hi-LPモード(ATRAC3plus/64kbps):約34時間 |
録音時間 (80分ディスク/Hi-MDフォーマット) |
PCMモード(リニアPCM/1.4Mbps):約28分、Hi-SPモード(ATRAC3plus/256kbps):約2時間20分、Hi-LPモード(ATRAC3plus/64kbps):約10時間10分 |
録音時間 (80分ディスク使用時) |
SPモード(ATRAC/292kbps):約1時間20分、LP2モード(ATRAC3/132kbps):約2時間40分、LP4モード(ATRAC3/66kbps):約5時間20分 |
| 本体で再生可能な形式 |
MP3(32〜320kbps)、ATRAC3(66〜132kbps)、ATRAC3plus(48〜352kbps)、リニアPCM(1.4Mbps) |
バッテリー寿命 (Hi-MD規格専用1GBディスク使用時) |
録音時:約6時間(PCM)、約9時間(Hi-SPモード)、約10時間30分(Hi-LPモード)、 再生時:約10時間(PCM)、約15時間30分(Hi-SP)、約19時間(Hi-LP)、約16時間30分(MP3) |
バッテリー寿命 (60/74/80分ディスク、MDモード使用時) |
録音時:約8時間30分(SP)、約10時間30分(LPモード)、約12時間(LP4モード)、 再生時:約15時間30分(SP)、約17時間30分(LP2)、約19時間(LP4) |
| 電源 |
リチウムイオン充電池「LIP-4WM」(3.7V/370mAh。USBバスパワー充電対応) |
| インターフェース |
USB 1.1/2.0 |
| 入出力端子 |
MIC端子、LINE-IN端子(光入力端子兼用)、専用リモコンジャック付きLINE-OUT端子(ヘッドホン端子兼用) |
| サイズ(W×D×H) |
87.7×87.7×17.3mm |
| 重量 |
約106g(バッテリ装着時) |
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(編集部 小林久)
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