2004年5月25日
「米イーインク社の電子ペーパーはやっぱり読みやすい」
ソニー(株)の読書専用端末“LIBRIé(リブリエ)”『EBR-1000EP』を使い始めた最初の感想はそんなふうだ。いつ消費者向けの製品になるのかと思っていた米E Ink(イー・インク)社の電子ペーパーが、ついに(世界で初めて!)日本語表示の携帯型電子ブック端末に搭載されて市場に現われた。あざやかなカラー画像全盛のこの時代、モノクロのシンプルな静止画像に感動しない人もいるかもしれない。しかし、その読みやすさは圧倒的である。電子機器でちょっと長い文章を読んでいるとプリントしたくなってくるが、電子ぺーパーを使ったこの端末ではそんなことはない。今の液晶パネルのように画面の向こうに光源があるわけではなく、紙と同じく読者の背後からの光の反射で読めるので、パソコンの画面とは比べものにならないぐらいに疲れない。
5年前、アメリカの大学の研究室にこの電子ペーパーを見に行ったときには、まだアルファベット1文字が5cm角ぐらいの大きさの解像度だった。昔のモノクロ液晶のようにブルーの背景に白い文字が浮かび上がっているという具合で、コントラストも不十分だった。「まもなく市場に出る」ということだったが、その年のうちにアメリカのデパートの天井にぶらさがったポスターやサンドイッチマンの看板に使われた電子ペーパーには、やはりそのままの解像度やコントラストのものが使われたようだ。それがいまや白地に黒の文字が浮かび上がり、文庫本程度の細かい文字も支障なく表示されている。電子ペーパーとはいうものの、感触は紙というよりセルロイドの下敷きぐらいのものだが、少なくとも見た目は、紙とそれほど変わらない。紙とは違い、ボタンひとつで文字サイズが変わるから、読みやすさは紙以上とも言える。
リブリエでは、画面のきれいさを優先するか、画面が粗くなるがページ送りの速さを優先するか、どちらかを選択できるようになっている。きれいさ優先だとページ送りのたびに画面が一瞬暗くなる(※1)。明るいところではページ送りを速くするほうを、夜など暗いところでは画像を鮮明にするほうを選んだが、2つの選択肢のあいだの変化がかなり大きいので、中間の選択肢がもうひとつあってもよかったように思う。
※1 編集部注:実測で約1秒程度
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きれいさ優先の場合の画面。ページ送りのたびに画面が一瞬(体感で1秒程度)暗くなる |
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速さ優先の場合の画面。前に見たページの文字が、ちょうど新聞の裏のページの印刷がうっすら透けてみえるような感じで、うっすら残ることもある |
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こうした問題はあるが、ともかく電子機器に搭載された電子ペーパー第1号としては及第点だろう。こういう表示装置が普及すれば、わざわざプリントアウトする必要性はかなり減る(紙のように読者自身が自在に書き込めるようになれば完全に必要なくなるかもしれない)。いよいよ紙よ、さらば! ……とばかりに電子ペーパーが使われ、コストも下がっていけばいうことなしだが、動画表示が重視されるようになってきたこの時代、そう調子よく行くかどうかはわからない。電子ペーパーは、いったん表示されれば画面が固定されて電力を使わない省エネ設計で、電力を使わざるを得ない動画像表示向けに高機能化が進められている液晶パネルなどとは、その持ち味が異なる。この先どれぐらい普及するかわからないが、プリントアウトした資料の山に悩まされている身としては、広まってもらいたいなあ……というのが率直な希望だ。
読みやすく、持ち運びやすい点に賭けてほしかった
想像以上に読みやすかったのでついディスプレイの話ばかり書いてしまったが、ディスプレイじゃなくて、端末のレビューをするんだった。
うーん(と、にわかに歯切れが悪くなる(苦笑))。よくある批判に、「メーカーのエンジニアはとかく機能をあれもこれも盛りこんで使いにくい装置を作る」というのがあるが、まさにそれを地で行ってしまったのではないか。出版社などからは、普及台数を増やして電子書籍を売るために「端末の値段をできるだけ安くしろ」という強いプレッシャーがあっただろうし、また持ち歩いて本を読むための端末だから、消費電力も節約する必要がある。先に書いたように、いったん表示されれば電力を食わないが、ページ送りや検索、メニュー選択などには電力を使う。コストや消費電力などの制約があったためか処理速度が遅く、例えば、内蔵辞書の範囲設定やメニュー項目の選択などをするときの反応が明らかに遅い(※2)。処理能力と機能が見合っていない。
※2 編集部注:例えば読書中、文章中のわからない単語を調べるために内蔵辞書の検索機能を使うとする。ジョグダイヤルを1回転させて検索対象にする文字を1つ増やすと、ジョグダイヤルを回転させてから画面にその動作が反映されるまで体感で約1秒かかる。長い単語は、文字の数だけ時間が余計にかかる
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リブリエの操作部 |
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QWERTY形式のキーボードから、文字を入力(“しおりメモ”機能) |
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こうした点は、キーの設定にも言える。辞書検索やメモ書きなどのために文字入力用のハードウェアキーを搭載しているが、それを除けばキーの数はそんなに多くはない。しかし、ページ送りだけでキーやジョグダイヤルなど3通りの方法がある。注が出てきたときなど、場面によって使い方が変わったりしている。まあゲームをしていて、「見つけたアイテムの思いがけない能力を発見するのが好き」みたいな人は、マニュアルを読んであれこれ試してみればいいし、ともかく読めればいいという人は注釈そのものを無視すればいいだけのことかもしれない。ただ、処理能力が限られているのなら、今回はとりあえず読みやすく軽量で持ち運びやすい点に賭けて、あとのよけいな機能を盛りこまず、価格を下げることに専念すればよかったように私は思う。あれこれ機能があるとついやってみたくなって、結局、「使いにくい端末だな」という印象を持たれることになるのではなかろうか。ページ送りについても、画面下のゲージに犬のアイコンが出てくる設定を選べるようになっているが、犬がどちらを向いているか確認してページをめくらないと、しょっちゅう送る方向を間違えてしまう。インターフェースには、工夫の余地がまだかなりあるのではないか。
電子書籍のデータは、USB接続かメモリースティックを使ってパソコン経由でリブリエに読み込む形をとっている。しかし、いつでもどこでも本を選んで読めるようにするためには、リブリエがインターネットに直接接続できるようにすることも必要だろう。また、電子ペーパーはカラー化を目指しているようだし、ウェブサイトの閲覧に対応すれば、通勤途中にニュースを読むこともできる。こうしたことも期待したい。
さしあたり、リブリエの電子書籍は“TimeBook Town”のサイトで会員になって購入する。月会費(210円)はいったん会員になると退会するまでクレジットカードから自動引き落としになる。また、この端末で読めるのは“BBeB”(Broad Band e-Book)という独自フォーマットの文書だけで、電子書籍は2ヵ月のレンタル方式である。どんどん新しくレンタルをしないと、一部の無料コンテンツを除き、2ヵ月経つとリブリエで読むものがなくなる。リブリエの購入にあたってはそうしたランニングコストも理解しておく必要があるだろう。
(歌田 明弘)
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“LIBRIé(リブリエ)”EBR-1000EP(正面) |
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表示パネル左側のページ送りキーを使えば、片手で操作できる |
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底面。左から、ストラップホルダー、DC IN端子、USB端子、ヘッドホン端子、音量調節キー、電源スイッチを備える |
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天面。メモリースティックスロットを備える |
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電源は単4形アルカリ乾電池(4本)。ACアダプターを持ち歩く必要がない |
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文庫本と大きさ比較 |
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DVDのパッケージと同程度の大きさ |
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視野角は約180度。文庫本のように、横から覗いても文字が読める |
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文字のサイズは5段階の切り替えが可能 |
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文庫本が読める程度の明るさがあれば、リブリエが読める |
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リブリエの付属品。画面左から時計回りで、本体、ソフトカバー、電源コード、ACアダプター、USBケーブル。このほかに、単4形アルカリ乾電池(4本)、CD-ROM、保証書付き取扱説明書が付属する |
| “LIBRIé”『EBR-1000EP』の主なスペック |
| 表示パネル |
6インチ(800×600ドット、約170dpi)、モノクロ2階調/4階調グレースケール。“E INK方式電子ペーパー”技術を採用 |
| 内蔵メモリー |
約10MB |
| インターフェース |
メモリースティック(PRO対応)、USB、スピーカー/ヘッドホンジャック |
| 電源 |
単4形アルカリ乾電池×4、ACアダプターDC5.2V |
| 最大電池持続時間 |
約1万ページ(単4形アルカリ乾電池使用時、ソニー測定) |
| 本体サイズ |
幅126×奥行き190×高さ13mm/重さ約190g(ソフトカバー、乾電池含まず) |
| 対応OS |
パソコン用ビューワーソフト『LIBRIe for Windows』の対応OS Windows XP/2000 Professional/Me(XP/2000を推奨) |
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