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【「なつゲー」レビュー Vol.5】ソロモンの鍵 “萌えゲー”の元祖たる“アツい”傑作パズルアクション
【「なつゲー」レビュー Vol.5】ソロモンの鍵
テクモ/NTTコミュニケーションズ

Printable Version 2005年2月18日

ソロモンの鍵
シーン1
(C)TECMO,LTD.1986

 数十年前には、まだ“萌え”なんて言葉は存在しなかった。共通する概念はあったと思うが、その言葉自体は確実になかったし、黎明期のファミコンにはむしろ関係なかったと言える。ましてや、“萌え”を強烈に意識したゲームなどは、考えられなかった時代ではないだろうか。いま思うに、サン電子の『マドゥーラの翼』やナムコの『ワルキューレの冒険』が、ファミコンに萌え(今ならさしずめこう呼ぶべき“何か”)を持ち込んだ原点のようにも思う。しかし、それは女性キャラを主人公にしたゲームとして、自然発生的に生まれた偶然の“萌え産物”であったわけだし、プレイヤーを萌えに誘導するようなゲーム制作でなかったのは明らかだろう。つまり、ファミコン本来の持ち味は、キャラクター性よりも“ゲーム性”に比重が大きかったとも言えるのである。



このルームの最初はこんな配置
このルームの最初はこんな配置
クリア直前にはこうなる
で、クリア直前にはこうなる。キミにも解けるかな?

 かたや現代、“萌え”はゲームの中でかなり重要な要素となっている。Xboxで売れたシリーズと言えば『デッド・オア・アライブ』が有名だろう。美少女三昧で“萌え”のデパートとも言える3D格闘アクションゲームだ。そして、このゲームを作っているのは、テクモという会社。今でこそ、萌え要素とゲーム性を化学反応させて“売れるゲーム”を作るヒットメーカーだが、実は渋い上質ゲームを数多く手がけた古参のメーカーなのである。その代表作を挙げると『スターフォース』に『アルゴスの戦士』、そしてなつゲーにも収録されている『ソロモンの鍵』がある。特に『ソロモンの鍵』は、極めてオリジナル性が強く、完成度も高い傑作だと思っている。

シーン2

 『ソロモンの鍵』は、魔法使いダナーを操作してマップ上の鍵を入手し、出口まで向かう面クリアー型のアクションパズルゲーム。主人公のダナーは、自分の足下に石を作ったり消したりできる魔法を使え、この魔法のみを頼りに鍵までのルートを作っていく。ステージには敵が配置され、これをかわしながらゴールを目指すため、パズルゲームでありながら非常にアクション要素の強いゲームでもある。それでいて、固定画面のため、プレイヤーはどのルートを通ればいいのかを熟考でき、パズルとしてのゲーム性も十分に保っているのだ。この『ソロモンの鍵』は、パズルとアクションが絶妙なバランスで融合し、考えて(解けて)気持ち良し、動かして気持ち良しのベストカップリングソフトとして当時の多くのユーザーに支持されたのである。

ルーム1の隠しアイテム
ルーム1はゲーム操作に慣れるための簡単なしかけだけだが、実は隠しアイテムを見つける楽しさを教える場所も用意していたりする

 また、何もないところでも、ブロックを作って消すと“アイテム”が出現する場合がある。このアイテムは各面に散りばめられ、かつ、非常に絶妙な塩梅で配置されている。例えば最初のステージである“ルーム1”の場合、ゴールの先にある窪地に隠されていたりするのだ(この配置は、ゲームシステムに慣れさせるレクチャーの意味をかねて置かれている点を考えると、これがまたよく練られた配置であることが分かる)。隠しアイテムは、ゲームの大筋とは関係ない部分にありながらも、宝探し感覚でプレイヤーを夢中にさせるという、ひとつのゲーム性を生み出している。



シーン3

 ゲームをやり込みたくなる要素はほかにもある。ゲームクリアー後に表示される“GDV”は、ゲームプレイの偏差値を意味する。この偏差値を上げるためには、ある特定の条件を満たしながらクリアーする必要があるのだ。

星座の名前とシンボルマークをモチーフにした世界観
星座の名前とシンボルマークをモチーフにした世界観

 世界設定も独特で、星座の名前が付けら得た迷宮をクリアーしていく(ちなみにタイトルにもある“ソロモン”とは、聖書に登場する“知恵深い王”を指す)。余談だが、星座をベースにしたこの設定は、同じく星座をモチーフにした戦闘服を身にまとって戦う某美少年アニメとほぼ同時期であり、開発期間やアーケード版の発表時期を考えると、『ソロモンの鍵』の方が早いのかもしれない。




シーン4

 テクモは、いまでこそ“萌え”要素を消化吸収し、一部ゲーマーの熱狂的な支持を集めるメーカーではあるが、その根底にあるのは、『ソロモンの鍵』に見られるようなハイセンスな“クリエイティビティー(創造性)”なのである。こんなイカしたゲームに出会うと、当時のゲーム少年だった私などは、今でいう“萌え”的な感覚(アドレナリン)を沸々とたぎらせたことを覚えている(そう、当時は“アツイ”という感覚がそれだった)。もちろん、この『ソロモンの鍵』もそんな、“萌え”る一本といえるのである。そして『ソロモンの鍵』が特に秀でたところは、『パックマン』や『テトリス』のように、唯一そこにしか存在しないゲーム性を持った数少ないゲームと言えるところだ。これ以上は要素を足し算も引き算もできない、完全なるオリジナルと呼べる一作なのである。

(文・内田 幸二/イラスト・戸塚 伎一)



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