DIGITAL BUYER

SE-200PCI パソコンで“単品オーディオの音”を楽しめるサウンドカード
SE-200PCI
オンキヨー
オープンプライス(実売価格:1万8000円前後)
http://www.onkyo.co.jp/

2006年12月15日

オンキヨーは、国内のオーディオ機器メーカーの中では、唯一PCI接続型のサウンドカードを販売しているメーカーである。オーディオメーカーらしい“こだわった設計”が特徴で、過去にリリースされた「SE-150PCI」と「SE-90PCI」の2製品は、高音質なサウンドカードとして、音にうるさいユーザーの間で大きな話題となった。

SE-200PCI
写真1 SE-200PCIの基板上には、新しく採用されたOS-CONや、おなじみの銅バスプレート、大型電解コンデンサーなどがところ狭しと立ち並んでいる。2chのDACには「WM8740」を新たに採用。6chのDACは「WM8766」、ADCは「WM8776」となる。


D/Aコンバーターを変更し、S/N比も115dBに向上

 オンキヨーのサウンドカードは、これまでステレオ出力に特化した「SE-80PCI」と「SE-90PCI」、マルチチャンネル出力にも対応する「SE-150PCI」の3種類が存在した。11月に発表された「SE-200PCI」(写真1)は、型番から推察できる通り、SE-150PCIの後継機種である。

大型コンデンサー
写真2 手前が電源供給を安定させるための大型コンデンサー。中央の紫色のコンデンサーがOS-CON。

 特徴としては、一般的なサウンドカードとは一線を画した“ぜいたくな作り”である点が挙げられる。SE-150PCIやSE-90PCIと同様に、電源供給を安定させるための“超大型電解コンデンサー”(写真2)、電源ラインとオーディオ信号のグランドを結線して基準電位を高める“銅板プレート”、アナログ出力に際してパルスノイズを除去し、なめらかなオーディオ信号を生成する独自のベクトル信号発生器“VLSC”(写真3)、などが回路上に盛り込まれている。

 一見すると、SE-150PCIと大きくは変わっていない印象を持つかもしれない。しかし、実際には細かな改良が加えられている。そのひとつが銅板プレートで、従来製品では、RCA端子の直前でクランク状に折れ曲がっていたものが1枚のストレートなプレートとなり、その左右に完全対称形のVLSC回路が形成されるようになった。銅板プレートは、ステレオ出力のみでなく、アナログの7.1ch出力回路にも使用されている(写真4)。

 デジタル回路の電源部と、入出力部分には、高域再生特性に優れたコンデンサー「OS-CON」を新たに採用している(写真2、5)。ステレオアナログ出力用のD/Aコンバーターも「WM8716」から、より高性能でS/N比も優れる「WM8740」に変更され、デジタル出力時のサンプリングレートも従来の最大96kHzから最大192kHzをサポートするようになった。

 結果として、ボード上にD/Aコンバーターを内蔵したサウンドカードとしてはかなり高性能なS/N比“115dB”を実現している。ちなみに、SE-150PCIのS/N比は110dBだった。



VLSC回路
写真3 銅板プレートをはさんで対称形に形成されたVLSC回路。
マルチチャンネルにも銅プレート
写真4 銅板プレートは、マルチチャンネル出力回路にも使用されている。
OS-CON
写真5 OS-CONは入出力部分にも使用されている。
サウンドチップ
写真6 サウンドチップはVIAのEnvy24HTだ。

 なお、オーディオコントローラーは、従来同様、台湾VIA Technologies社の「Envy24HT」で、ドライバーソフトもリファレンスのままだ(写真6)。この点はSE-150PCIと同様で、対応するAPIはWDM(Windows Driver Model)に限られ、ASIO(Audio Stream Input Output)には非対応のままである。



750Hz付近が若干突き出る一方で、5〜7kHzに落ち込みを確認

 SE-200PCIの特徴は、前ページで述べたとおり。以降は計測結果と試聴による音質の評価を行なっていく。

図1 計測結果(アナログ2ch)
図1 アナログステレオ出力の計測結果。図中、緑色の線がリファレンス、オレンジ色の線が計測結果となる。

 まずはオンキヨーが明らかに力を入れているステレオアナログ出力から見ていこう。図1上側にある“周波数特性グラフ”を見てほしい。リファレンス(緑の線)と比べてグラフが相似形であれば理想的だ。また、折れ線は上にあればあるほどよい。

 実際の計測結果を見ると、750Hz付近が角のように突き出ていることが分かる。また、5〜7kHz付近も相似形とは言い難く若干落ち込んでいる。ただし全体的な出力レベルはかなり高い。ちなみに、マスターボリュームは10段階で8くらいの設定とした。

 次に図1下側にある“位相特性グラフ”を見てほしい。この場合の“位相”とは、おおざっぱに言うと左右の発音タイミングだと思ってもらって構わない。左右の発音タイミングがほんのわずか(1ms以下)でもずれると“位相ずれ”と呼ばれる状態が発生して、気持ち悪い音に聞こえる。もっとひどく位相がずれていると「シュワシュワ」という音が聞こえ始めたりする。よって位相はそろっているのが一番なのだ。グラフは、真ん中にあるオレンジ色の一本線がピシッと入っている状態がいい。この場合、出力位相はまったく乱れていない。



厚みと重量感を兼ね備え、ボーカルも前に出る

 上記の結果を踏まえて、実際にステレオ試聴を行なってみた。比較対象機は、米digidesign社の「ProTools|HD Accel3+192 I/O」。ただし、再生ソフトには、米アップルコンピュータの「iTunes7.0.2」を選んだ。これは、SE-200PCI/ProTools|HDともに、使用者数が多いソフトと思われるためだ。

 結果は“すっきりクリアで透明感の高いProTools|HD”と“厚みと重量感のあるSE-200PCI”という印象だ。超高域は意外と差がないのだが、高域でリズムを刻むハイハットなどがいる帯域が、「落ち込む」と言うほどではないものの、「やや弱く」感じられる。これは計測結果でも指摘した5〜7kHzの軽い落ち込みが効いているのだろう。

 逆に750Hzが少し持ち上がっているせいか、中低域が軽くふくらんで聞こえる。数字の上では、重低域から低域にかけては特性通りであるのに、実際の音が“ふくよか”に聞こえるのはこの2つが原因と推察できる。SE-200PCIでは、ボーカルが一歩前に出て聞こえるような印象だが、これは恐らくハイハットの帯域が少し落ちているので、そのぶんボーカルが邪魔されることなく前に出てくるのだろう。ノイズ感は特に感じない。

 音質傾向は違うものの、価格にして数十倍の192 I/Oと劇的な差がないのは立派だ。ただし、192 I/Oや米Creativeの「Sound Blaster X-Fi」などを筆頭に、最近のサウンドカードは“クリーン&ハイファイ”を狙った製品が多い。この点はSE-200PCIとはまったく異なる味付けだ。SE-200PCIの音はどちらかというと“太い音のするオーディオ機器”といったイメージだ。

 ここまでくると「どちらが優秀か」というより「どちらが好きか」という嗜好の問題になると思う。実際に購入する際には、このあたりの違いを十分吟味すべきだろう。“クリーン&ハイファイ”という言葉は魅力的だが、ハイファイで高域がバリバリ出ている製品の音は「耳に合わない」と感じるユーザーも意外に多いので、注意が必要だ。



若干ナローな印象があるマルチチャンネル出力

 マルチチャンネル出力の計測はフロントのL/R(FL/FR)のみ計測した。理由は簡単で、センター(C)、サブウーファー(LFE)、サラウンドのL/R(RL/RR)では、非圧縮のPCM形式でピンクノイズ(周波数に反比例して弱くなるノイズ)を再生する手段がないからである。

 一般ユーザー向けに販売されているDVDオーサリングソフトはそもそもステレオのみしか扱えない。マルチチャンネルに対応する高級なものでもDolby AC-3やDTSといった圧縮オーディオでないとオーサライズできない。ASIOに対応していればそれでも各チャンネルの計測が可能なのだが、本機に限ってはそれもない。よって、このような形に落ち着いた。

図2 計測結果(アナログ7.1ch)
図2 アナログ7.1ch出力の計測結果

 先程と同様に、周波数特性と位相特性を見てほしい(図2)。位相はこちらも問題なし。多少問題があるのは周波数特性の方で、ステレオアナログ出力に比べて、全体が10dB近く下がっていることが、一目で分かる。従来製品(SE-150PCI)でも5dBくらいの差があったが、ステレオアナログ出力はD/Aコンバーターが変更されたことで+5dB程度S/N比が良くなったため、合計で10dB近くも出力レベルに差が出てしまったようだ。

 それだけではない。250Hz付近が大きく落ち込み、750Hzの角はこちらにも存在する。2kHz以上でも5dB以上の極端な齟齬(そご)は見当たらないものの、全体的に相似形とは言いにくい形状になっている。特に4kHz以上が徐々にリファレンスより下がっているのが気になる部分だ。

背面端子
写真7 背面端子、右から2chのRCA出力、光角型のデジタル入出力端子、7.1chのアナログ出力端子(形状はD-Sub 15pin)。
付属ケーブル
写真8 付属ケーブル。マルチチャンネル出力時は左下の変換ケーブルを用いる。出力はステレオミニピン端子×4、入力はステレオRCA端子1組となっている。

 実際に試聴した結果では「基本的な音質傾向はステレオRCA出力に似ているものの、より高域と低域が詰まってレンジが狭い傾向」に感じられた。一言で言うと、RCA出力の方がより“ハイファイ”に聞こえるのだ。もちろん一世代前のサウンドカードやオンボードのAC97のようにひどい音質ではないが、RCA出力と比べると残念ながら明らかに見劣りがする。



デジタル出力は、リファレンスに対して若干の強調感を覚える

図3 計測結果(デジタル出力)
図3 デジタル出力の計測結果

 デジタル出力もストレートPCM(非圧縮)のピンクノイズを計測している。AC-3では直接計測ができないし、デコーダーを介すとその性能も影響するため、本機のピュアなデジタル出力品質がわからなくなるからだ。

 実際の計測結果だが、位相はもちろん優秀。周波数特性はマクロに見るぶんには破綻しておらず、大きくリファレンスから逸脱した個所はないものの、形状は見事な相似形とは言い難い。どちらかというと、リファレンスをかなり強調したような形状だ。個人的に気になったのは125Hz付近の緩やかな山と3kHz付近に“山というより角”ができている点だ。



高域が落ち、中域がやや張り出した形になる録音時の特性

図4 計測結果(録音時)
図4 アナログ入力の計測結果

 アナログ入力は、正直な話、計測結果だけをもって結論付けるのが難しい。テストに用いるアナログ出力機器の特性も加味されてしまうからだ。よってあまり細部を取り上げて議論しても意味は薄い。全体としてリファレンスが形成している大きなカーブに近ければ、お気に入りのアナログ出力機器(例えばレコードプレーヤーやカセットデッキ)の音が良好に録音できると考えて良い。カーブに近いかどうかを判断する際、低域と高域の高低差、カーブの形状に気をつけてほしい。

 SE-150PCIのアナログ入力は、以前他誌で試したところ位相ずれが発生していたが、現在はフィックスされているとのこと。本機の計測結果も問題なく、位相もきちんとしている。

 周波数特性に関しては、一応細部も取り上げておこう。気になる箇所は3点。350Hzくらいの小さな角が飛び出すぎる点、22kHz付近から高周波に向けて急に落ち込む点、1kHzから16kHzが今ひとつ相似形とは言えない点である。この中で恐らく重要なのは、22kHz付近の大きな落ち込みだ。カーブ形状は2kHzから8kHzくらいが若干膨らみ気味で、高域と低域の高低差が若干狭い。この結果から、低域は若干弱く中高域が若干強い、超高域があまりない録音になることが予想される。

テスト環境

テスト内容
一般的に計測に用いられる“ピンクノイズ”を、SE-200PCIで録音(入力)/再生(出力)し、その周波数および位相特性をイスラエルWaves社の解析ソフト「PAZ」で計測する。

出力テスト
再生機器:SE-200PCI
再生ソフト:米Sony Mediapictures「Sound Forge 8.0d」(WDMドライバーを使用)
ピンクノイズ録音機器:Power Mac G5および米digidesign「Pro Tools|HD Accel3+192 I/O」。レベルマッチングのため、SE-200PCIと192 I/Oの間で、独RME社の「Quad Mic」を使用している
ピンクノイズ録音ソフト:Pro Tools Software 7.1cs10
使用したピンクノイズ:Sound Forge 8.0dで作成。アナログ出力は24bit/192kHz。デジタル出力はPro Tools|HDの仕様の都合上、24bit/96kHzで作成

入力テスト
ピンクノイズ再生機器:Power Mac G5+米M-Audio「Firewire 1814」
ピンクノイズ再生ソフト:QuickTime 7
録音機器:SE-200PCI
録音ソフト:米Sony Mediapictures「Sound Forge 8.0d」(WDMドライバーを使用)
使用したピンクノイズ:Sound Forge 8.0dで作成。アナログ入力24bit/96kHz

再生環境
米Mackie Design Onyx 1220(アナログミキサー:SE-200PCIおよびProTools|HDの出力はここにアナログ接続)
デンマークDynaudio BM6A(ステレオスピーカーおよびサラウンドスピーカーのFL/C/FRとしても使用)
同BM10S(サブウーファー:ステレオ試聴時は未使用)
米GENELEC 1039(RL/RRスピーカー)




望まれるドライバーとマルチチャンネル出力の改良

 以上、SE-200PCIを詳細に見てきたが、いくつかの問題が見えてくる。一貫してソフトウェアはVIAのドライバーに依存しっぱなしだし、そのためにASIOにも非対応だ。この点は残念ながら、SE-200PCIでも指摘しなければいけない。3Dオーディオ技術のEAXもバージョンが2.0と古く、EAX対応の最新3Dゲームをバリバリ遊べるわけではない。よって本機のスタンスはあくまでも音楽や映画鑑賞が基本となる。とはいえ、時折EAX1.0/2.0程度のライトなゲームもするという程度なら十分だろう。

 何より気になるのは、アナログマルチチャンネルの品質がアナログステレオチャンネルと比べて、見劣りしてしまう点だ。世間でアナログマルチチャンネル出力のハイファイな音質があまり求められていないということは決してない。むしろSACD/DVDプレーヤーをあえてアナログ接続するユーザーもいると聞く。パソコンからのアナログマルチチャンネル出力をパソコン用のホームシアタースピーカーに接続する程度ならこれでも十分だろうが、せっかくRCA出力がこれだけのできなのだから、「マルチチャンネルも、もうひとがんばりしててしかった」というのが正直な感想だ。



パソコンで専用機器のような音を聞ける稀有な存在

 しかし本機にはそれを補って余りある魅力があるのも事実だ。このサウンドカードがもっとも得意とするのはいわゆる“ステレオオーディオPC”。次に“HTPC(ホームシアターPC)”であろう。世の中には、さまざまなコーデックを利用した圧縮音楽や、ダウンロードムービーがあふれており、これらを再生するためにオーディオPCやHTPCを大画面テレビやオーディオ機器に接続する必要性が生じることも多い。

 今後は“e-onkyo music”のような“HD品質”をうたった音楽配信サイトも現れてくる可能性が高い。その際、パソコンメーカーの理屈で作られたサウンドカードではなく、老舗オーディオ機器メーカーのノウハウを投入して作られたSE-200PCIを導入することで“パソコンくさくない”“オーディオ機器で聴いたことのある”音質が得られるのは魅力だ。

 もっと言えば、SE-200PCIは“聴いて少し幸せを感じる”“耳が疲れない”パソコン用のオーディオ機器なのだ。このようなオーディオ機器のアプローチで開発されたサウンドカードは筆者の知る限りオンキヨーの製品だけなので、その意味でも存在意義は大きいし、このように積極的に製品をブラッシュアップしていく姿勢も評価したい。

高品質音楽配信サイトe-onkyo musicとの連携
e-onkyo music
e-onkyo music

最後に、同社が最近開始した音楽配信サイト“e-onkyo music”についても、簡単に触れておこう。“iTunes Store”を始めとするほとんどの音楽配信サービスは、基本的に圧縮フォーマットによる配信が行なわれており、実際には残念ながらCD品質と同等ではない。

一方、e-onkyo musicはWMA Losslessフォーマットを使用することで、著作権を保護しながらCDとほぼ同等の16bit/44.1kHzまたは24bit/96kHzのいわゆる“HD(High Definition:高解像度)品質”の音楽配信を行なっている。品質的にどちらが有利かは一目瞭然であろう。そして、このような高品質な音楽を本来の品質で再生するには、当然高品質なオーディオ再生機器が必要になる。その際、SE-200PCIは有力な候補のひとつになるはずだ。


SE-200PCIの主なスペック
製品名 SE-200PCI
S/N比 115dB(2chアナログ出力時)
周波数特性 0.3Hz〜88kHz(2chアナログ出力時、+0/-3dB)
サンプリング周波数(デジタル入力) 32/44.1/48/88.2/96kHz
サンプリング周波数(デジタル出力) 32/44.1/48/88.2/96kHz/176.4/192kHz
入力端子 ステレオRCA、光デジタルオーディオ入力
出力端子 ステレオRCA、光デジタルオーディオ出力、7.1chアナログ出力
対応OS Windows 2000(SP3以上)/XP(SP1以上)
対応API EAX2.0、A3D 1.0、QSound、STEREO EXPANDER

(榎本 涼)




[通常ページに戻る]
ASCII24 http://ascii24.com/
Copyright (C)2000-2008 ASCII Corporation. All rights reserved.