キネツモ24

コミュニケーションマシンとしての携帯電話の利用実態を報告
TRONイネーブルウェアシンポジウム2002“TEPS2002”

2001年12月15日

TRONイネーブルウェア研究会(会長:坂村健/東京大学大学院教授)は12月15日、TRONイネーブルウェアシンポジウム2002“TEPS2002”を都内で開催した。
TRON(The Real-time Operating system Nucleus)は、坂村健教授らによって1980年代初頭から研究が続けられてきた組み込み用OSで、携帯電話(※)、自動車のエンジン制御、デジタルビデオ、FAXなど、すでに世界中のさまざまなところに使われている。さらに、10万字以上の文字が使える「BTORON『超漢字』」や、わが国の局用交換機の標準OSである「CTRON」、インターネット上でセキュリティを保ちながら情報や権利を受け渡すことができる「eTRON」、eTRONアーキテクチャを搭載した標準開発プラットフォーム「T-Engine」などに派生している。
また、TRONは「身の回りの生活空間に目に見えないコンピュータを偏在させ、快適な生活を送れるようにする“どこでもコンピュータ”の技術基盤づくり」を提唱してきており、その代表的な機器のひとつとして携帯電話が話題の中心となってきた。
TRONはロイヤリティーを取らない完全オープンアーキテクチャーとして知られるが、その根底には「すべての人がいつでもどこでも不自由なく使える」という考えがある。子どもから高齢者まで、健常者、障害者の区別なくすべての人に使いやすいインターフェイスを目指している。
今回のシンポジウムでは、バリアフリー、ユニバーサルデザイン指向の機器が増えているなか、今後新しい技術の開発や利用にあたり何が求められているのかを、具体的な例示をもとに議論がすすめられた。

※ NTTドコモ製の携帯電話のほとんどにITRONが利用されているとしており、1億台以上が生産されたという。また、Java搭載携帯電話では、ドコモ以外の携帯電話でも利用されているという。具体的なメーカー名は三菱電機(株)のNTTドコモ端末以外は明らかにされていない。

携帯電話は理想的なコミュニケーションマシンだ


坂村健教授
坂村健教授

基調講演では、坂村健・東京大学大学院教授が「どこでもコンピュータ環境におけるコミュニケーションマシンとイネーブルウェア」をテーマに、オープンアーキテクチャとしてのTRONの無限の可能性を論じた。
CPUとメモリが小さなチップカードに収まるようになった現在、これらが生活環境を構成する一つひとつのモノ、家電製品、家具などに応用されることが想定される。「汎用」的なコンピュータから、より目的が明確な「専用」機器へと広がりをみせることを示しながら、「それらデジタル環境と人の接点となるコミュニケーションマシンとして携帯電話がもっともわかりやすいハード」であるとし、「他人や環境とコミュニケーションする目的だけでなく、各自の言語や身体属性にチューニングされ、ネットワーク中に流れる“共通語”としてのデータを、それぞれのユーザーや、それぞれの状況に最適のメディアに変換してユーザーに伝え、また逆にユーザーから情報を“共通語”にしてネットワークに流すことのできる最適のツールである」と、聴覚障害者のメールによるコミュニケーション例などを事例として挙げながら説明した。



中野博隆氏
中野博隆氏

また、招待講演ではNTTドコモ マルチメディア研究所長の中野博隆氏が「FOMAがひらく新しいコミュニケーション」と題して、携帯電話のブロードバンド化によるコミュニケーションの広がりとその可能性について、FOMAのサービス概要をまじえて報告した。



私の「目」になってくれたFOMA


長谷川貞夫氏

携帯電話に関連する事例報告のなかで注目を集めたのが、日本点字図書館 評議員である長谷川貞夫氏によるFOMAの活用事例である。長谷川氏は現在全盲でありながら、FOMAのビジュアルタイプP2101Vに大きな可能性を見出し、サービス開始と同時に購入、活用しているという。
「20年前に富士通のパーソナルコンピュータFM8が登場したときに、はじめて点字ではない自由に漢字の混ざった文章を書けるということに大いに興奮したが、今回のFOMAビジュアルホンの登場は20年ぶりの興奮だ」と感想を語った。
これまで、視覚障害者は傍らに介助者がいなければ周囲の状況を知ることができなかった。しかし、TV電話機能のあるP2101Vを持つことで、必要なときに介助者に電話をかけ「これは何」と聞いて状況を知ることができるようになったという。これまで不可能だったタッチパネル式のATM操作でも、パネル画面をP2101Vに表示させることで離れたところに居る介助者の助けで操作が可能になった。一人で出かけた外出先の風景もP2101Vによって「見る」ことが可能になったという。



P2101Vを活用する長谷川氏

「“目”の代わりになってくれる機器がポケットに入る大きさで、しかも片手で操作できるとなれば、これほど素晴らしいものはない」と絶賛しながらも、「眼鏡店でFOMAの視力を測ったら0.1だし、夜盲症気味だ」と笑いを取りながら、将来のサービスや技術の向上に期待を寄せた。



メールを聴けるようになったF671i


塩谷純氏
塩谷純氏

大学合格祝いにデジタルムーバF671iを買ってもらったという都立八王子盲学校3年生の塩谷純氏は、ユニバーサルデザインを目指し音声読み上げ機能などを備えるF671iの使用感を語った。
「弱視の同級生たちが携帯電話でメールをしていることをうらやましく思っていた。全盲の私はメールには縁遠く、プリペイドの音声通話専用の携帯電話を利用していた。あるところでF671iには音声読み上げ機能があることを知り、F671iに買い換えてみた。F671iはとても操作しやすく、画面の状況を音で知ることができて便利。何といっても、友人たちからのメールを聴くことができるのは感激的だった」
F671iは本来視覚障害者向けに開発されたものではないため不完全なところがある点を差し引きながらも、新しい機能によってコミュニケーションの幅が大きく広がったことを大いに評価していた。



(携帯24編集部 木暮祐一)




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