【特別企画】ライバルは『iPod』と“ディズニーランド”!? ――KDDI高橋 誠氏インタビュー
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2004年9月7日
KDDI(株)の“CDMA 1X WIN”が、8月に開始したパケット通信料定額サービス“ダブル定額”によって、第2段階に突入した。CDMA 1X WINは、下り最大2.4Mbps/上り最大144kbpsの伝送速度を実現する第3世代携帯電話サービスで、昨年11月末のサービス開始と同時にパケット通信料定額制も始まった。KDDIは定額制だけではなく、CD音源を使った“着うた”(2002年12月開始)、『INFOBAR』(2003年10月発売)に代表されるデザイン性を全面に出した端末など、業界に先駆けた試みを次々と打ち出し、月間の契約純増数が10ヵ月連続(※1)で(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモを抜くなど大きく躍進している。CDMA 1X WINは11月にサービス1周年を向かえるが、これからどのように進化するのか。インターネット接続サービス“EZweb”のサービス/コンテンツを担当するコンテンツ・メディア本部長の高橋 誠氏に、定額制時代の新サービスの方向性について、月刊アスキー編集主幹の遠藤 諭が直撃した。
※1 2003年8月〜2004年5月までの10ヵ月連続
パケット代金を安くしないと新しいことはできない
「パケット代金を安くしないと新しいことはできない。その究極が“定額”だ」と、高橋氏は切り出す。
ダブル定額は、定額料金の最低ラインを2100円に引き下げることにより、定額サービスの利用者、CDMA 1X WINの利用者の増加を期待したもの。定額サービスは、学生が半額で通話を利用できる“ガク割”の対象外であるにも関わらず、月額固定4410円の旧サービス(EZフラット)の時から学生層の契約が多く、CDMA 1X WINにおける定額サービスの利用率は85%程度になっているという。
パケット料金が定額になれば、いわゆる“パケ死”をしない安心感から、ユーザーがEZwebのコンテンツを購入するようになる。現在のCDMA 1X WINの契約者でコンテンツを購入している人の平均の月間購入額は1500円程度で、CDMA 1X(同700円程度)と比較すると倍以上という(2004年5月末現在)。高橋氏は「購入するコンテンツの内容の傾向は変わらず、着メロや動画系の利用が多い。いままで辛抱していた分を買うようになったのだろう」と分析する。
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5月に開催されたauショップの商談スキルコンテストより。写真は、CDMA 1X WINが気になっているというドコモユーザーのホステスを相手にした接客のロールプレイング。定額制のメリットを全面的に打ち出し、他キャリアからの乗り換えユーザーの獲得を目指す(画像をクリックするとコンテストの記事にジャンプします) |
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auの店頭カタログのマンガにも登場した“パケ死”問題(画像をクリックするとカタログの記事にジャンプします) |
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定額制は“携帯ベースのコミュニケーション”を育てるキーワード
コンテンツの買い控えが減ることは、KDDIが定額制によって目指す“新しいこと”ではない。「従量制課金の場合、ユーザーは自分の好きなEZwebのサイトにアクセスするときは基本的に“お気に入り(ブックマーク)”から直接たどっていたようで、(KDDIが運営するEZweb全体の)トップページのアクセス数は意外なほど少なかった。しかし定額制の導入で、トップページのアクセス数が劇的に向上した。CDMA 1X WINの夏モデルから“Macromedia Flash Lite”に対応するなど携帯電話の表現能力も向上しているので、(トップページでは)雑誌でいうところの“特集”もできるだろうし、(ユーザーごとに適切な内容を配信するべく)CRM(Customer Relationship Management)を使うこともできるかもしれない」(高橋氏)
高橋氏は、こうした定額制を踏まえたコンテンツの再編・新企画の戦略を総称して「携帯電話の“メディア化(情報媒体化)”」と読んでいる。CDMA 1X WINのサービス開始と同時に始まった大容量コンテンツ配信サービス“EZチャンネル”も、このメディア化の1つだという。EZチャンネルのような大容量のコンテンツをパケット代を気にせずにダウンロードできるのは定額制のメリットだが、なにも利用しやすくなるのは大容量コンテンツだけではない。「(業界では)あまり言われていないが、掲示板を頻繁に再読み込みするとか、小さなサイズのデータを頻繁にやりとりできるという側面もある。定額制は、“携帯ベースのコミュニケーション”を育てるキーワードなのだ」
モデルは“ディズニーランドのパスポート”
高橋氏は、メディア化のモデル(成功例)として、テーマパーク“東京ディズニーランド”(千葉県浦安市)を挙げた。
「従量制のビジネスモデルでは、外出先でも自宅でもずっと携帯電話を使っていてほしかった。ところが定額となると、ずっと使ってくれなくてもよい。自宅でパソコンがあるなら、自宅ではそれを使ってもらってかまわない。2100円なり4410円なりは、定額に関する世界観に対する入場料、つまりディズニーランドの“パスポート”のようなもの」と、高橋氏は説明する。ディズニーランドのパスポートは、そのチケットに定められた期間に限り(たとえば“1デーパスポート”であれば1日間)、入園とすべてのアトラクションに使用できるというシステムを採る。
「パスポートを買えば、ジェットコースターであるとかアトラクションやショーで遊びたい放題だが、逆に、ずっとそれで遊ばなくても来園者は満足して帰っている。パレードを見てディズニーの世界観を堪能したり、お気に入りのキャラクターの商品を買ったり、思い思いのことをして、外に出るまでに数千円、場合によっては1万円以上ものお金を使っていく。(ディズニーランド)はKDDIがauの携帯電話で目指している“メディア化”の、いい実例といえる」(高橋氏)。このように、パケット料金の収入以外のビジネスチャンスが、メディア化で広がるという。
マスメディアと連携したビジネスのヒントはFMケータイにあり
KDDIは4月の組織改正で、EZwebのコンテンツの企画・開発を担当するコンテンツ推進部に加えて、新しいビジネス部門として“メディア・ビジネス部”を作った。「(新部門の)業務の内容は名前のとおりで、“FMケータイ(FMチューナー搭載au携帯電話)”、地上デジタル放送と連携したサービス、ポータルビジネスを担当し、音楽や出版業界との付き合いもこの部署が担当する」(高橋氏)
定額制は、マスメディアとの融合による新サービスの開発にも進展をもたらすという。「通信事業者と、放送や音楽といったメディアとの間のコラボレーションは、定額制だから進めやすいという面がある。FMケータイは、まさにその“はしり”。携帯電話にFMラジオが内蔵されると、ユーザーはラジオでニュースが聞くことができるようになり、それを受けてEZwebの利用時間が短くなり、最終的にはパケット代も発生しないので困る――という考えに、従来であれば至ってしまう。ところが定額制が前提であれば、“暇なときにFMを聞いたっていいじゃないか”ということになる」(高橋氏)
では、既存のメディアと携帯電話と放送の融合がビジネスになるとは、どういうことなのだろうか。高橋氏は「FMケータイを見るとヒントがある。放送を聴いて、それに触発されたユーザーが行動を起こす――これが新しいビジネスを起こす」という。例えば、FMケータイは、オンエア中の曲名を表示し、その曲の着メロや着うたをEZwebで検索することが可能。地上デジタル放送がEZwebと結びついた場合は、「サッカーの試合を見て、中田選手のユニフォームがかっこいいからと、EZwebですぐに買うことができる」(高橋氏)と、可能性の一例が紹介された。
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今年5月に開催されたKDDIの地上デジタルテレビ放送の受信に対応した携帯電話の開発発表会より。放送中のドラマ(写真上部)で役者が着用しているブラウスが、EZwebのECサイト(写真下部)で買えるというイメージのデモ(クリックすると開発発表会の記事にジャンプします) |
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昨年9月に開催されたKDDIと全国FM連合の提携記者発表会より。2003年12月にFM放送が受信できる携帯電話の第1号『A5503SA』が発売された(クリックすると記者発表会の記事にジャンプします) |
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『iPod』とビジネスモデルは変わらない
新聞報道などで“auが自身で携帯電話への音楽配信ビジネス参入へ”と報じられ、中には具体的なスケジュールや仕様などを示しているものもある。これについて高橋氏は、「新聞は推測なんで、基本的に発表していることはない」と、釘を刺す。
ただし、音楽配信ビジネスの実現には前向きで、「“やりたいな”とは言っている」(高橋氏)という。仮に実現した場合の方式や課題についても、「ダウンロード方式で、技術的にはあんまり大きな制約はない。あとは著作権管理システムがあればよい」と具体的だ。さらに、パソコン向けのものも含めた音楽配信サービス全般の問題としては、「(インターネット経由での楽曲のダウンロード販売と)レコード販売店との棲み分けについての問題をクリアするのが、時間がかかる」と、説明する
パソコン向けの音楽配信サービスに限りなく近い着うたについては、「着うたこそが、日本の成功した音楽配信のビジネスモデル。『iPod』(iTunes)とビジネスモデルは変わらない」と自信を見せる。「今年初めにTVドラマの影響で“クイーン”(1971年にイギリスで結成されたロックバンド)が流行ったときには、(1曲105円が多い着うたの価格設定としては高めの)1曲210円でもユーザーに受け入れられ、レコード会社に喜んでもらえた。さらに、NTTドコモとは課金の仕組みが違っていて、ドコモは月額課金だが、こっちはPPV(ペイパービュー)もできる。レコード会社は、アーティストごとに105円とか210円とか、ランクに応じて価値をつけたい。それに対応できたことはよかった」(高橋氏)
こうしたやり取りの上で、音楽配信は着うたを水平拡大したビジネスであるという捉え方でいいのかと尋ねると「それが無難だ」と高橋氏はいう。著作権管理や著作権者の許諾の問題などの山積された問題への対処についても、「あせらずに、着うたの延長線上で考えるのがよい」と話す。動画配信については、「音楽配信は極端な話、エンコードするだけ。それに対して動画は携帯電話に合わせて作らないといけない。携帯電話の画面で『ハリーポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』のような大長編映画を何時間も見ていられないだろう。そうなると、どうしても携帯電話向けオリジナル動画コンテンツを作らないといけなくなる」と、音楽配信のようにはいかないと説明する。
高橋氏は、音楽配信について具体的なスケジュールを示さなかったものの「定額制が受け入れられたのというは歴史的な出来事。ここから相当変わる」と、これから始まるであろう大きな変化を示唆した。一般ユーザーへの“普及期”にさしかかった定額制をベースにauがどんな次の一手を打つか、注目する必要がありそうだ。
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「韓国の音楽配信サービス(パソコン向け)では、ユーザーが自由に仮想のコンピレーションアルバムを作れて、その良し悪しを投票させるものが人気なんですよ」(遠藤)「それは面白いですね。日本人はコンピレーションに弱いから、合っているかもしれない(笑)」(高橋氏) |
(永島和夫)
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