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ウィルコム、次世代PHSを公開――通信速度上下20Mbpsを目指す

Printable Version 2006年02月21日

from ASCII24

(株)ウィルコムは21日、東京港区の本社にて報道関係者向けに現在開発中の次世代PHSに関する公開実験を行なった。同社は、先月27日に総務省から次世代PHSの認証実験を行なうための実験局免許を取得している。今回の公開実験では、この実験局免許に基づく2.3GHz帯の5MHz幅を利用した次世代PHSのデモンストレーションが行なわれた。

開発本部長 黒沢 泉氏
開発本部長の黒沢 泉氏
企画開発部 課長補佐の安藤高任氏
企画開発部 課長補佐の安藤高任氏

ここでいう次世代PHSとは、ウィルコムが実用化に向けて開発している、上下最大速度20Mbpsの通信システム。総務省のワイヤレスブロードバンド推進研究会報告書において、次世代PHSは“広帯域移動無線アクセス”の1つとして位置づけられており、

  1. 3Gおよび3.5Gを上回る伝送速度(20〜30Mbps程度以上)
  2. 一定レベル以上の上り伝送速度(10Mbps程度以上)
  3. 3Gおよび3.5Gを上回る高い周波数利用効率

――の3点が要件なのだという。

ウィルコムの次世代PHSは、アクセス方式に“OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplex Access)”と、TDMA/TDDを採用する。またネットワーク構築には、“マイクロセル”方式(後述)、基地局の自立分散制御という現行PHSからのコンセプトを採用する。マイクロセル方式は、数十〜数百メートルごとにきめ細かく基地局を設置して多数の基地局でエリアをカバーするというもので、1基あたりの出力は小さいが、トラフィックを分散することで1人あたりの通信速度が安定するという利点がある。そのほか、電磁波が微弱なため医療機器への影響が少ないという、現行PHSの特徴も備えるという。次世代PHSの商用化にあたっては、現行のPHSサービスで構築した全国16万という基地局のネットワークを活用する。

次世代PHSのコンセプト。現行PHSの技術的特徴が基本となる
次世代PHSのコンセプト。現行PHSの技術的特徴が基本となる
“広帯域移動無線アクセス”の要件に沿い、最大20Mbpsの通信速度を実現する
“広帯域移動無線アクセス”の要件に沿い、最大20Mbpsの通信速度を実現する

次世代PHSが採用する主な規格は以下のとおり。

次世代PHS 現行PHS
周波数帯 1〜3GHz 1.9GHz
最高伝送速度 上下それぞれ20Mbps以上 上下それぞれ1Mbps以上
アクセス方式 OFDMA、TDMA/TDD 4TDMA/TDD
キャリア周波数幅 5MHz〜20MHz 300kHz
フレーム長 5ms上下対称 5ms上下対称
変調方式 BPSK〜256QAM BPSK〜256QAM
音声コーデック SIP準拠 G.726ADPCM
セル構成 マイクロセル マイクロセル
周波数有効利用技術 アダプティブアレイ
SDMA
MIMO
アダプティブアレイ
SDMA

同社は今後これらの仕様を元に、PHSの普及団体“PHS MOU”において、中国など現在PHSを採用している各国キャリアーでも採用できるよう検討を重ねた上で標準化を行なう予定だ。

デモでは2Mbpsを超える通信速度を記録

今回公開された実験ネットワークシステムは、OFDMの電波伝搬特性を評価するためのもので、変調方式は“BPSK(Binary Phase Shift Keying)”に固定して行なわれた。ウィルコムは現在の実験を“第1フェーズ”と呼び、2006年夏以降からの“第2フェーズ”では、上下20Mbpsの伝送速度を目指すとともに、“アダプティブアレイアンテナ”“SDMA(Space Division Multiple Access)”“MIMO(Multiple Input Multiple Output)”といったアンテナ関連の技術についても実験を行なう予定だ。

次世代PHSのスケジュール。夏からは伝送速度の向上に関する実験が行なわれる
次世代PHSのスケジュール。夏からは伝送速度の向上に関する実験が行なわれる

企画開発部 課長補佐の安藤高任氏によれば、チューニングが完全でない現在の試験環境では変調方式が“16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)”で、基地局側の下り最大速度が3Mbpsとのこと。デモンストレーションでは、会議室に基地局を1台、パソコンと接続された端末を2台用意。始めに端末1台でインターネット上のネットワークベンチマークテストを行ない、2Mbpsを超える通信速度を記録した。さらに、次世代PHSで接続されているパソコンと、別室の有線ネットワークに接続されたパソコンとの間で“Skype”によるテレビ電話を行なったほか、(株)USENの無料ブロードバンド放送“GyaO(ギャオ)”のストリーミング映像を再生してみせ、いずれも快適だった。

屋内に設置された次世代PHSのアンテナ
屋内に設置された次世代PHSのアンテナ
パソコンに接続されている次世代PHSの実験用端末
パソコンに接続されている次世代PHSの実験用端末
屋内では基地局1台と端末2台の構成でデモンストレーションが行なわれた
屋内では基地局1台と端末2台の構成でデモンストレーションが行なわれた
ウィルコムのCMをストリーミングで流すデモ。端末1台で接続した場合と、2台とも接続した場合で速度が異なる
ウィルコムのテレビCMをストリーミングで流すデモ。端末1台で接続した場合と、2台とも接続した場合で速度が異なる
Skypeのビデオチャット。次世代PHSで接続したパソコンと、別室の有線で接続されたパソコンで映像付きの会話を行なった
Skypeのビデオチャット。次世代PHSで接続したパソコンと、別室の有線で接続されたパソコンで映像付きの会話を行なった
ネットワークベンチマークのサイトにて通信速度を計測。最大で約2.5Mbpsの速度を記録した
ネットワークベンチマークのサイトにて通信速度を計測。最大で約2.5Mbpsの速度を記録した

屋外実験の設備も公開され、虎ノ門のビル屋上に、桜田門方面に向けられた基地局が1台設置されていた。クルマ等で移動中の通信速度に関しては、正確な実験を行なっていないが、安藤氏によれば、時速60km以下で走るクルマから次世代PHSでネットワークに接続したところ、1Mbps程度の通信速度が確認できたという。また、ビデオのストリーミング再生やビデオチャットも快適に行なえたとのことだ。

虎ノ門地域のビル屋上に設置された、次世代PHSの基地局アンテナ
虎ノ門地域のビル屋上に設置された、次世代PHSの基地局アンテナ
次世代PHSの実験用基地局
次世代PHSの実験用基地局。ビル屋上のアンテナとつながっている
虎ノ門のビルから桜田門の方面約1kmまで通信が可能
虎ノ門のビルから桜田門の方面約1kmまで通信が可能
フィールド実験では一般車の車内で移動中でも快適に通信を行なえたとのこと
フィールド実験では一般車の車内で移動中でも快適に通信を行なえたとのこと

なお、音声端末の開発については、最大20Mbpsの速度を音声端末で実現するには消費電力の問題があり、チップセットの開発など技術的課題をクリアーする必要があるという。次世代PHSの商用化時期は未定で、投資額は現状のところ公表されていない。そのほか、総務省がWiMAX方式などに向けて現在検討を進めている2.5GHz帯の解放については、帯域が割り当てられるよう狙っていきたいとした。

(島 徹)




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