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【遠藤諭のケータイ出たとこレポート】『W-ZERO3』にユーザーが白熱する理由 Vol.1
サヨナラ、“20世紀型のモノ作り”の発想

Printable Version 2005年12月5日

国民の5人に1人が使うことになる?

“新世代モバイルコミュニケーション端末”と名付けられたウィルコムの“W-ZERO3”『WS003SH(B)』の発売日が、12月14日(予約は12月9日より)と発表された

ASCII24が10月末〜11月初旬に行なった読者アンケートでは、なんと59.5%が“買いたい”という意思を持って持っており、さらに驚くべきは21.8%が“発売日に間違いなく買う”と答えている。アンケートが行なわれた1ヵ月ほど前には、販売価格も明らかにされていなかったのにだ。また、いくらが妥当か自由回答形式で尋ねた設問では、携帯電話のハイエンド機の発売当初の価格を意識した意見が多く、今回、新規契約価格(年間契約同時加入)が3万円台とされたことで食指が伸びた人も多いに違いない。

仮に、ASCII24の読者が日本人の平均像であるとしたら、ウィルコムは日本の全人口1億2800万人の21.8%、すなわち約2800万台のW-ZERO3を用意しないといけない勘定になる。携帯電話の普及率は現在約70%で9000万台くらいだから、希望どおりW-ZERO3が導入されると全体の31%を占めることになる。「なぜ、こんなにも、W-ZERO3という端末は、前評判が高いのだろう?

AIBOやPS2なみに日常会話になっているW-ZERO3の発売。これって何かの間違いではないか? とさえ思えてくる
AIBOやPS2なみに日常会話になっているW-ZERO3の発売。これって何かの間違いではないか? とさえ思えてくる

実のところ、ASCII24の読者は、日本の市場全体からすれば“偏り”がある。しかし、この“アーリーアダプター(初期採用者)”とも呼ばれる層が非常に高い関心を持ったことは、その後、数年で何らかの形で一般ユーザーも関心を持つようになるともいえる。電子メールしかり、デジタルカメラしかり。まったく個人的な意見だが、W-ZERO3それ自体の魅力もさることながら、こういう端末が“実際に発売されるという出来事”にユーザーが共感した部分があるのではないかと思う。

ここ数年で、圧倒的に市場で支持された単体のデジタル機器のブランドといえば『iPod』をおいてほかにないだろう。初代iPodが発売されたのは、2001年11月である。あれからもう5年が経過しようとしているのに、ほかのメーカーは、なぜ米アップルコンピュータ社と同じことができないのだろう?

アップルは、必ずしもこの分野への参入が早かったわけではなかった。アップルが参入するよりも前に、松下電器産業(株)もソニー(株)もシャープ(株)も、シリコンタイプのポータブル音楽プレーヤーを発売している。HDDタイプでは、1年以上前にクリエイティブメディア(株)が『Nomad Jukebox』を発売しているし、もっと前に韓国HanGo Electronics社の『HanGo Personal Jukebox』が出ている。

iPodとNomad Jukebox
iPodとNomad Jukebox。Nomad Jukeboxが内蔵するHDDは6GBで、CDで150枚分の音楽が入るという謳い文句だった

iPodが成功した理由は、ちょっと詳しい人なら誰でも3つや4つは挙げられるだろうが、そのことをここで説明するつもりはない。なぜ、ほかの会社からiPodのような製品が出てこないのかといえば、世の中のフェーズが変わっているということを理解していないからではないかと思う。もう21世紀になって5年も経っているのに、たいていの会社は“20世紀形のモノ作りの発想”で製品を作り続けていると私は思うのだ。

“20世紀型のモノ作りの発想”とは?

それは、たとえば“商品サイクル”というものがあって、一定期間ごとに新製品が投入される。新モデルが出るたびに、それを“ピカピカ”に見せるように、旧モデルを“陳腐化”するように働きかけてきた。第二次産業(製造業)と第三次産業(販売・流通)がタッグを組んで、工業製品をユーザーに売りまくってきたし、我々もそれを享受してきた。しかし、このサイクルというのに、一般の消費者は、そろそろ飽き飽きしている。

ここで、「iPodだってバンバン新モデルを出しているでしょう」と突っ込まれそうだが、iPodは、あのモノトーンのカラーやミラー仕上げで、アップルの現在の製品ラインや旧モデルのデザインを尊重している。むしろ、変わらないデザインコンセプトだから何台も買いたくなるのである

20世紀型のモノ作りの発想では、モノ自体よりも“マーケッタビリティー(市場性)”とか“プロダクティビティー”といった言葉が先行する。この“ティビティ”が“毒”なのだと私は思っている。もっとも、いまの日本の企業というものが20世紀型の経営のままなのだから、それも無理からぬことなのだろう。ご丁寧にも、米国の20世紀型の経営を、いま頃になって導入して四半期ごとの業績にビクビクしている。国立科学博物館で行われた“テレビゲームとデジタル科学展”(2004年7月17日〜10月11日開催)の準備で資料をまとめているときに気づいたことがあった。家庭用TVゲーム機の分野では、米国メーカーがそうやって自滅していったのに対して、日本の経営者の信念や辛抱が、結果的に大きな成果に結びついたのだ。

世界中でPDAフォン市場が盛り上がっていてもなかなか発売できないのがいまの日本だ。写真は、米国で発売中のPDAフォン『iPAQ h6315』
世界中でPDAフォン市場が盛り上がっていてもなかなか発売できないのがいまの日本だ。写真は、米国で発売中のPDAフォン『iPAQ h6315』

日本のPDA市場はここ5年間ずっと冷え切っている。ある調査会社は、2002年の国内のPDA市場の規模を百数十万台と予測したが、フタを開けてみると百万台を大きく割り込む結果となった。そして今は、なんと調査会社は“永久にPDAの春は訪れない”かのような予測を立てていたりする。世界のPDAの市場規模は2000年以降、一気に立ち上がって1200万台に達しているのに対して、国内市場はまるで連動しなかったのだ。これほど、大きな差の付いているジャンルは珍しい。そこに“いま必要とされているモノ”“ユーザーに満足感を与えるはずのモノ”という発想で、W-ZERO3が登場した。いろんなものに縛られて誰も自信を持って製品を出せなかったところに、“いいな”と思える製品をそのまま出してきた。iPodとは別の意味で、“20世紀型のモノ作りの発想”を脱しているところにW-ZERO3の魅力の1つがあると思う。

あなたの会社は、“20世紀型のモノ作りの発想”から脱しているだろうか?

続く

(遠藤 諭)




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