キネツモ24

【遠藤諭のケータイ出たとこレポート】『W-ZERO3』にユーザーが白熱する理由 Vol.3
スマートフォンを取り巻く状況が同時に動き出している

2006年03月27日

遠藤 諭が“W-ZERO3”の魅力をしみじみと語る集中連載の第3回目。長年デジタル業界を追ってきた編集者の立場から、モノ作りの哲学を考えた第1回(12月5日公開)、第2回(12月12日公開)も掲載中。

固定と移動の融合の時代

『W-ZERO3』の発売から4ヵ月。その間に、携帯電話やモバイル関連で、実にさまざまなことが起きている。というよりも、W-ZERO3の発売も含めて、移動通信の世界が、大きな転換期を迎えつつあるのだと思う。まず、モバイルを取り巻くニュースで早くも今年最大のトピックとなりそうなのが、ソフトバンク(株)によるボーダフォン(株)の買収である。

ソフトバンク発表会
写真 今月17日、ソフトバンク(株)がボーダフォン(株)を買収すると発表。写真は左から、ボーダフォンのウィリアム・T・モロー(William T・Morrow)氏、ソフトバンクの孫正義氏、ヤフー(株)の井上雅博氏

この背景にあるのは、いまネットの世界で最もかまびすしく言われている“FMC”(Fixed Mobile Convergence=固定通信と移動通信の融合)だ。W-ZERO3を、無線LAN接続のブロードバンドに繋げていると、固定通信(ADSLや光などケーブルで繋がるネット)と移動通信(携帯や無線LANなどケーブル不要のネット)の境目が、いかにあやふやになっているかを理解できる。公衆無線LANは移動通信の世界に近いが、自宅の無線LANは、限りなく固定通信だからだ。しかも、フルブラウザーをVGAの画面で使っていると、W-ZERO3は、もはや携帯よりも固定通信の方に近い使い勝手となる。

W-ZERO3
W31T
私のW-ZERO3とW31Tでascii24.comの画面を表示しているところ。単純に解像度の理由ともいえるがW-ZERO3のネットの使用感は携帯よりもパソコンに近い(どちらも画面設定は購入時の状態)

これまで固定通信と移動通信は、それぞれ別の業界としてやってきた。移動通信ブランドである“au”と、光やISPといった固定通信サービスを両方提供しているKDDI(株)を別にすれば、それぞれプレイヤーは別の会社だった。移動通信なら(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモや(株)インデックスや“魔法のiらんど”を運営する(株)ティー・オー・エス、固定通信ならOCNを運営するエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)やヤフー(株)や楽天(株)といったところが挙げられる。ところが、携帯電話機が高性能化して、公衆無線LANのようなモバイルでのブロードバンド接続が出てきて、W-ZERO3のようなスマートフォンも増えてくると、この境目がなくなってくるのは明らかだ。だとしたら、そんな時代に主役になるのは誰かというお話である。

今年11月、携帯電話の世界に“ナンバーポータビリティー”(携帯キャリアーを変更しても、携帯電話機の番号をそのまま使える仕組み)というサービスがやってくる。そうなると、おのずとキャリアー間の顧客獲得競争は激しさを増す。一言でいえば、安売り合戦が始まることになる。そんな中、昨年、ソフトバンクとイーアクセス(株)、アイピーモバイル(株)が携帯電話事業の新規免許を獲得した。

ユーザーから見れば、「携帯電話の料金は安くなるのか」というのが興味の対象だが、新規参入組からすると、「通話・通信料金で稼ごうという話ではない」というのが正しい言い方となる。ソフトバンクの場合、ボーダフォンを買ったことで、そこを狙ったビジネスがグッと加速された。新規に一から立ち上げるよりも2〜3年早まるといってよいと思う。

ソフトバンクは、どちらかというとこの業界における当たり前のことを当たり前にやってくる会社である。ここでは、「帯域を使い切ろうとする者が勝者となる」というブロードバンドの鉄則を、きっちりと進めてきているだけなのだ。携帯電話は、単なるブロードバンドの出入り口のひとつに過ぎないと考えている。だから、モバイル端末には、公衆無線LANでも家庭内LANでも何でもバンバンつなげてくるのではないかと思う。

その結果、ADSLのときと同じように日本は世界一携帯電話の料金の安い国になるのかもしれないが、他のキャリアーは料金に気を取られているとまずいのではないか。例えば先に述べたように、KDDIには固定通信と移動通信の両方があるが、ポータルなどのサービスの色は薄い。もっとネット企業の色を着けておいてもよいのではないかと思う。もちろん、同じことはNTTグループについてもいえる。

ウィルコムは、そんな時代にどんな戦いをするのか? iモードの盛り上がりのときがそうだったように、たぶん一歩引いた別のフィールドで戦うのだろう。いまのところ、そうした時代を先取りしているのがW-ZERO3だから、この端末が興味深いのである。



2010年に出荷される携帯の半分はオープンOSを採用

W-ZERO3の発売後で、個人的に最も興味深く思ったニュースが、“NetFront”でお馴染みの(株)アクセスが“ALP”(ACCESS Linux Platform)を発表したことだ。バルセロナで2月に開催された“3GSM World Congress 2006”で発表されたALPは、次世代の携帯電話やアプライアンス機器のOS、開発環境などを提供する統合プラットフォームだ。ものすごく単純に言えば、パソコン以外の身近なマシンにおけるマイクロソフトみたいな立場を狙うというのである。

 これについては、今月29日発売の『Palm Magazine 永久保存版』で、アクセスの副社長兼CTOの鎌田富久氏にインタビューをさせていただいた。パームの神様・山田達司氏と一緒にうかがったその内容は、ぜひとも同ムックで読んでいただきたい。これは、日本のデジタル業界にとってもかなり意義のあるニュースなのではないかと思う。

アクセスは2005年9月、Palm Source社を買収すると発表した。Palm Source社は、いうまでもなくPDAであるPalmのOSを提供する会社。Palm Oneの『Toreo600』シリーズや京セラ(株)の『7135』など、スマートフォンでのPalmOSの実績もある。その一方、Palm Source社自身は、PalmOSをLinuxに移行すべく取り組んできていた。アクセスが発表したALPは、一言でいえば、“Linux+Palmのユーザーインターフェース+アクセスの携帯モジュール”といった構成のプラットホームである。

Treo600とW-ZERO3
アクセスは、ALPでPalmOSの実証されている操作性の良さを生かしたいと考えたようだ。写真は、Palm系のTreo600とWindows MobileのW-ZERO3

 2010年頃の世界の携帯電話の総出荷台数は、10億台くらいになるらしい。同社はその半分(5億台)くらいがオープンOSになると予測している。いまのところ、その頃に携帯OSの市場を争っているのは、現在シェアの面で一歩先を行く“SymbianOS”、それから現在6分の1くらいのシェアを持つという“Windows Mobile”、そして、アクセスが今回発表したALPの3つになりそうなのだ。同社は、その年間5億台になると予測されるオープンOS市場で、半分のシェアを取ってしまうという意気込みなのである。

マイクロソフトが何年もかけて戦略的にやってきた携帯電話のOSの世界である。もちろん、アクセスはそんな宣言はしていないし、今後もマイクロソフトと仕事していく部分もあるだろう。しかし、ちょっとミーハーに言えば、「ビル・ゲイツの向こうを張る」という見方もできるわけだ。日本のソフト屋さんも頑張っているところはいろいろあると思うが、これだけ威勢の良いことを言っている会社は、いまどきそう多くはないのではないか?

W-ZERO3やスマートフォンを取り巻く世界が、どれだけホットな領域か? この2つの出来事を見ても明らかだ。ほかのキャリアーからもW-ZERO3のようなスマートフォンやPDAフォンが出てきそうである。一方、発売から4ヵ月、W-ZERO3のユーザー層は、いままでのPDAのユーザーからの買い換えだという議論(関連記事)もあるのかもしれない。しかし、ここが発展しないことには日本の移動通信の世界は面白くならないし、実際にそこは伸びていると思う。W-ZERO3は、そんな流れの中で過激に前に進むしかない宿命にある。「もっとやってくれ、ウィルコム!」と言いたい。

●お知らせ ウィルコムファンサイトがオープン!

W-ZERO3のユーザーのための便利情報をお届けする“ウィルコムファンサイト W-ZERO3”がオープンしました。使いこなし活用術の紹介や、周辺機器のレビューなどを掲載中! さらに3月31日午後3時まで、オープン記念のプレゼントキャンペーンを実施中。




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