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【遠藤諭のケータイ出たとこレポート (特別編)】iPhoneは「携帯とPCを同次元にする」


2007年1月17日

from ASCII24

アップルコンピュータの社名からコンピュータが取れて“アップル”になったからといって、コンピューターの時代が終わったのではない。コンシューマエレクトロニクスが、どんどんコンピューターになっている時代とも言えるからだ。その象徴が『iPhone』だろう。

iPhone
『iPhone』のペーパークラフトを手に著者近影

2007年1月9日から米国サンフランシスコで開催されていたMacworld Expo 2007について、まともなレポートは他の記事を見ていただくとして、ここでは海外携帯プチコレクターでもある遠藤諭が、iPhoneや『Apple TV』で感じたことをお伝えする。

iphone
iPhoneに吸い寄せられる人々。写真はプレゼンテーションだが、これとは別にサンプルが透明ケースに入れられて展示されていた。ケースにすり寄って記念写真を撮ろうとして注意されている女性もいました

「iPhoneを見なきゃ」と会場に飛び込むと、人々が透明ケースを囲んでいたからすぐに分かった。デモ画面を表示中のiPhoneが、ゆっくり360度回転している。想像していたよりもずっと画面がきれいでキビキビと動いていて、ポケットに入る新しいメディアが登場したという印象だ。高機能携帯は“スマートフォン”というジャンルでくくられているが、むしろ“メディアフォン”と呼ぶほうが似合っていると思う。

高機能携帯のプラットフォームでは、今、熾烈なシェア争いが繰り広げられている。シンビアン(Symbian OS)とLinuxが分け合う中、Windows Mobileが割って入っているという図式だったが、そこにいきなり“OS X”が登場したというのは異変というしかない。アップルがOS Xを他の携帯電話機メーカーに提供する可能性は低いが、同社は1年前にブラウザー『Safari』のソースコードをオープンソース化している。それがノキアのスマートフォン『Nokia E61』などに搭載されているのはご存知の通りだ。

これは何を意味しているのかというと、言ってしまえば「PCと携帯が同じ次元になった」ということである。たとえば、米Palm Sourceを買収した日本の(株)アクセスは、1年前にスペインで行なわれた“3GSM”という携帯系のイベントで“ALP”というプラットフォームを発表した。

ALPは、Linuxの上に自社の携帯向けモジュールとPalm OSのユーザーインターフェースをのせたもので、2010年頃までには、市場の半分のシェアを取るという野心に満ちたものである。

あるいは、Macworld Expoと同時期にラスベガスで開催されていた家電見本市“2007 International CES”ではWindows Moble 5.0を搭載したスマートフォンを展示している。

しかし、PalmもWindows Mobileも“PDA”の文化であるのはご存じのとおりだ。どちらもこれから十分に市場を取っていく有望なプラットフォームだし、当面はこちらが主流なのも変わらないだろう。しかし、iPhoneは別モノなのだ。つまり、“PDA”ではなくて“コンピュータ”(というよりもMacintosh)なのである。

会場におけるGoogle Mapsのデモではないが、今後、パソコンでやっていたことをどんどん携帯電話機でもやれるようになる。そのときに、動作上の制約やストレスをどこまで減らせるかが、大きなテーマになってくる。そのため、“OS X”という意味は大きい。


iPhoneのプロセッサーはマーベル製『Monahans』?

iPhoneは、見た目のカッコ良さや機能だけでなく、決定的なパラダイムの変化を狙っている。

実は、この点に限っていえば非常によく似た現象が、CESでも起きている。それは、マイクロソフトの“UMPC”(開発コード名“オリガミ”として昨年登場した超小型PC)の新版“ビスタガミ”──つまりWindows Mobileではなく、PC用のOSを搭載した超軽量端末である。今回のCESで評判だった『OQO』などだ。

目下、米インテルも米AMDも、チップセットメーカーである台湾のVIA Technologiesなども含めて、目指しているのは高性能/低消費電力の動作環境である。例えば、米マーベル(Marvell Technology Group)のXScale系プロセッサー『PXA3xx』(開発コード“Monahans”)は、スマートフォン用なのに1GHz前後とういうバカみたいなスピードで動作するシロモノで、無線やビデオまでサポートしている。それがちょうど出荷時期を迎えている。

ちなみにiPhoneにはインテル系のプロセッサが搭載されているのではという情報が流れているみたいだが、インテルは昨年、XScale事業をマーベルに売却している (私がインテルでMonahansのお話をうかがった3日後にニュースで流れて驚いたのだが)。

iPhoneがARM系コアのアプリケーションプロセッサーを採用しているのだとすると、マーベル製の『PXA3xx』なのではないか? もっとも、この記事が掲載される頃には、すでに何かが明らかになっていて、この文章自体が大変恥ずかしいものになっている可能性もあるが……。

いずれにしろ、決定的なパラダイムの変化とは、プロセッサーの進化という“シーズ”に 起因するというのが私の見方だ。従って同様のことは他メーカーも考えていいはずで、そう考えると実は2007年は携帯端末が楽しくなりそうだ。

OQO
「要するにソニーのType Uみたいなもんでしょ」と突っ込まれそうな『OQO』だが


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実は、Macworld Expo 2007には出かけたものの、スティーブ・ジョブズの基調講演には間に合わなかった。その内容も確認していないので邪推の域を出ないかもしれないが、つまるところiPhoneの登場というのは、携帯電話機とパソコンが同じ次元に並んだことを意味する。

もともとマイクロエレクトロニクスというのは、別の次元にあるものを、無理やり下の次元に持ってくるものだ。そもそもパソコン自体が、企業や学校にしかなかったコンピューターを、個人の次元にまで落としたものとも言える。

iPhoneで携帯電話機とパソコンが同じ次元になったということは、見方を変えると、コンピューターと通信の完全なる合体ともいえるものだろう。どちらが主でもなく、どちらが従でもない。そう考えると、Apple TVも同じような軸の発想でとらえることができる。それの非モバイル版が、Apple TVなのだ。

Apple TV
セットトップボックスの世界では、ベタなデザインで動きが緩慢な製品が多いが、『Apple TV』の動きはキビキビとしている。ライバルは、PS3やXbox 360かもしれない

もっとも、Apple TVは、iPhoneに較べるとぐっと日常生活的な製品である。

アップルは、ハードウェアメーカーの強みをつねに盾にしてくる会社だ。“iTunes Store”では、モバイルで持ち歩くことを理由に、それまでストリーミングが中心だった映像配信の世界にダウンロードして所有させるスタイルを持ち込んだ。そして、気が付けば高品位映像である。

Apple TVに触っていて思ったのは「これって、開きっぱなしのウィンドウだな」ということだ。

配信系のサイトは、ブラウザーを立ち上げ、URLやリンクボタンを叩いてもらって、たいへんに分かりにくいサイトの説明を読んで初めて視聴できる。ユーザーが、そのサイトにたどり着く確率は、ウミガメの子供が、元気に大人になって帰ってくる比率より低いだろう(ウミガメが成人になる確率は案外高いのだが)。

それに対してApple TVは、茶の間に物理的に開いてしまったアップルの動画配信サイトのウィンドウのようなものである。実は、CES 2007の会場でも似たような発想の製品が展示されていた。ソニーブースに、“AOL Video”“Yahoo! Video”“Grouper”の映像配信を、Apple TVと同じように視聴する『BRAVIA Internet Video Link』だ。

ソニーがCESで展示していた『BRAVIA Internet Video Link』。まだプロトタイプのようだ



さて、iPhoneやApple TVで感じたのは、実に今のハードウェアや利用環境のトレンドを確実に捉えた製品だということである。つまり、シード(CPUやインターネット環境)とニーズ(携帯で何でもやりたい)を冷静に見たら、シゴクまっとうなモノ作りである。それをサラっと「欲しい、欲しい」と言わせる製品に仕立て上げるパッケージングがアップルなのだ(先見日記の「ソニーとアップル」を参照)。

ところで電話といえば、ジョブズと一緒にアップルを創業したスティーブ・ウェズニアックである。例えば、電話のタダがけ器(BlueBox)を作ったことはよく知られている。

今回、Macworld の後、サンフランシスコの南方、マウンテンビューにあるコンピューターの博物館“Computer History Museum”に出かけたのだが、ウォズの作ったBlue Boxが『Apple I』とともに展示されていた(東京カレー日記「Googleの最初のサーバーは、HDDとケーブルの怪物みたいな物体」参照)。Macworldの基調講演──iPhone発表の日には、ウォズニアックが会場に来ていたそうなのだが。

blue box
ウォズニアックが作った『Blue Box』。Computer History Museumにて


(デジタル評論家 遠藤諭)




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